
2026.5.1
【対談】短期間で5施策を完遂!佐世保市で日本遺産魅力増進事業を実施
長崎県佐世保市は、2016年、「鎮守府 横須賀・呉・佐世保・舞鶴〜日本近代化の躍動を体感できるまち〜」として、他3市とともに日本遺産に認定されました。
以降、軍港にまつわる遺産を観光に活かすべく、さまざまな取り組みを重ねています。
そんな佐世保市が2025年度に活用したのが、文化庁「日本遺産魅力増進事業(日本遺産を活用した魅力ある地域づくり推進モデル事業)」(上限額:1,500万円)。
従来からあったさまざまな課題の解決に向け、周遊ツアー造成からストーリーブックの制作、ガイド育成などに取り組みました。
あっぱれは、本事業において、コンソーシアムの事務局を担ったほか、周遊ツアー造成、ガイド育成などに中心的に携わりました。
「とにかく時間がなかった」。
関係者がそう語る本事業。
佐世保市観光課で本事業を担当された川内野篤さんと、あっぱれの文化観光コーディネーター・杉崎に、今回の取り組みのポイントについて聴きました。

画像右:佐世保市観光課 川内野篤さん、左:杉崎、下:聞き手・溝端
「魅力増進事業」への応募の背景
―「日本遺産魅力増進事業」に取り組もうと思ったきっかけは?
川内野:佐世保の鎮守府の取り組みには、もともとたくさんの課題があり、補助金のメニューを見ながら「うちの課題に使えるのはどれか」と考えていました。
そんな中、2025年5月頃に、株式会社マップルさんとあっぱれさんから「こういう文化庁の事業がありますよ」とご提案をいただいたのがスタートです。
最初は横須賀・呉・舞鶴を含め、四市が連携して一緒に申請しようという話もありました。
ただ、それぞれに事情もあって、今回は佐世保を中心に取り組むことになりました。
―具体的に、どんな課題を感じていたんですか?
川内野:まず、行政のコスト削減により、パンフレットがなかなか作れなかったことです。
特に、佐世保の日本遺産の全体像を一冊でわかりやすく伝えられるガイドブックが欲しかった。
既存のものは分厚すぎたり、逆に内容が薄かったりと、なかなかぴったりこなかったのです。
二つ目にあったのは、「させぼ立神(たてがみ)近代化歴史公園」の準備です。
佐世保市の鎮守府の日本遺産は、市内各所に点在しています。
その全体像を紹介するためのガイダンス施設を、2026年11月にオープンする予定で整備中です。
そこで販売できるお土産品をつくりたいといったことがありました。
このほか、「スルーガイド」の不在という長年の課題もあって。
佐世保市内の各スポットには、それぞれガイドさんがいます。
ただ、それらをつないで案内できる人材が、なかなか育っていなかったんです。
佐世保市も財政が厳しい状況ですが、「日本遺産魅力増進事業」は、“10分の10”で支援を受けられる事業のため、積極的に活用したいと思いました。
コンソーシアムで実施

ガイド育成講座の様子
―実際に、どのような事業を実施されましたか?
杉崎:大きく分けて、この5つの事業を実施しています。
①周遊プランの造成・販売
市内の日本遺産構成資産を巡る、タクシーを活用したプライベートツアーを造成。あわせて、軍港・造船・水道・交通などのストーリーをまとめた「佐世保鎮守府ガイドブック」も制作。
②ガイド育成講座・交流会
現地実習2回を通してスルーガイドを育成。また、横須賀・呉・舞鶴も参加する4市合同のオンライン講義も開催。
③グッズ開発
長崎銘菓「クルス」の日本遺産鎮守府バージョン、特別ドリップコーヒー、そして創業70年の洋食店のビーフシチューのレトルトの3品を開発・販売。
④インバウンドを含む発信強化
訪日観光メディア「DiG Japan」に日本語・英語・繁体字の三か国語でタイアップ記事を掲載。
⑤デジタルマーケティング戦略の策定
新ガイダンス施設のオープンを見据えて、ターゲット別に認知度向上・来訪意欲の喚起を図る戦略を策定。
なお、事業はコンソーシアム(実行委員会)形式で実施しました。
全体管理を担ったのは、佐世保市観光課さん。
そして、佐世保観光コンベンション協会さんが周遊ツアーの造成・販売など、株式会社NBCソシアさんがグッズ開発、株式会社とっぺんさんがガイドブックを制作、マップルさんが訪日観光メディアへの記事掲載を担当しています。
一方で、あっぱれは事務局として、佐世保観光課とともに全体管理を担いました。
また、周遊ツアー企画、ガイド育成講座、グッズデザイン、デジタルマーケティング戦略まで、プロジェクトの推進を全般的に幅広く支援しています。
特に大変だったこと

本事業で造成したグッズ(長崎銘菓「クルス」の日本遺産鎮守府バージョン)
―事業を進める中で、特に苦労した点は?
川内野:とにかく時間がなかった、というのが一番です。
文化庁の交付決定がなかなか下りなくて、事業を本格的に始められたのが、9月に入ってからでした。
ちょうどこのとき、日本遺産の継続審査もあったので、そのあたりの事情もあったのかもしれません。
なので、グッズ開発の方向性や事業者との初期ヒアリングなど、動かせる部分は早めに進めておいて、決定が降りてから一気に加速させた感じです。
杉崎:私が本格的に関わり始めたのも、9月頃からです。
そこから事業終了の1月下旬まで、5つの施策を大急ぎで進行させなければいけませんでしたね。

周遊ツアー「俵ヶ浦コース」の丸出山砲台観測所跡
―周遊ツアーをつくる過程では、杉崎と川内野さんが、一緒に現場を見ながら検討した、とお聞きしました。
杉崎:はい。最初に川内野さんに一泊二日でご案内いただいて、日本遺産の構成資産を解説付きでインプットさせてもらいました。
たとえ時間がなくても、実際に現場を自分の目で見ることが、プランを組む上で必要だと思っていたので。
ただ、現場を実際に見てみると、課題が次々と見えてきました。
公共交通機関では行きにくい場所があったり、車を停められないエリアがあったり。
どうしたらいいか、本当に悩みました。
佐世保観光コンベンション協会さんにもがんばっていただいて、最終的に「タクシーを活用したプライベートツアー」という形に落ち着きました。
―ツアー造成以外にも、課題に感じた点は?
杉崎:事業を動かしていく中で見えてきたのが、必要な専門人材の不足です。
ガイド育成を担える外部講師がいない、今回つくりたいグッズにぴったりのデザインをできる人材がいない。
そういった状況が、進めていくにつれて、はっきりしてきました。
そこであっぱれのネットワークを活用して、ガイド育成の講師のアサインと講座設計、グッズ開発のためのデザイナーの紹介まで対応しました。
―川内野さんから見て、あっぱれにお願いしてよかったと感じた点はどこですか?
川内野:杉崎さんには本当に感謝しています。
時間がなく、関係者も多い中で、連絡の窓口をほぼ一手に引き受けていただきました。
スケジュール管理もしっかりしていただいたので、とても助かりました。
「もう少し時間があれば、もっとできたのに」という思いがありますが、「せっかくいいチームができたので、このメンバーでまた次もやりたい」という声が、関係者の間から自然に出てきているのが何より嬉しいですね。
今後目指すこと

周遊ツアー「針尾コース」の石原岳堡塁跡
―今後はどのような展開を見据えていますか?
川内野:横須賀・呉・佐世保・舞鶴の四市が連携した取り組みをしっかり進めていきたいと思っています。
今回は、佐世保がほぼ単独で行った事業でしたが、この「鎮守府」の日本遺産の強みは、四市が一体となることにあると思っています。
文化庁からも「遠隔地同士のシリアル型連携の事例」として注目いただいていますし、そもそも、四市の連携は昭和25年から続いています。そこの歴史をもっと可視化し、発信していきたいですね。
そのうえで、「四市一体でやっています」と強く言えるような共通コンテンツの整備が、次の大きなテーマだと感じています。
共通の音声ガイダンスの導入や、四市で共通性のあるグッズの開発など、やれることは多くあると思います。
杉崎:私も、四市の皆さんと今後やっていきたいアイデアがいろいろあります。ぜひ今後も、よろしくお願いします。
―本日はありがとうございました。
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